プロフェッショナルの弁護活動

刑事弁護は,豊富な知識と経験を求められる専門分野です。もちろん,刑事弁護活動には,どの弁護士でも行うべき基本的な活動というものがあります。そうした基本的な弁護活動でよい結果が得られる事件もあります。しかし,それだけでは十分でない事件があります。高度な知識と経験に裏打ちされた弁護活動を行わなければ,依頼人を救えない事件があります。

当サイトに登録した弁護士が提供するのは,誰もができる基本的な弁護活動だけではありません。基本的な弁護活動を行うのは当然として,さらに,我々にしかできないプロフェッショナルの弁護活動を行うことを目標にしています。以下では,刑事手続の各場面における弁護活動の目的を前提に,「ベーシックな弁護活動」と,「プロフェッショナルの弁護活動」の違いを説明します。

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逮捕・勾留されたら

弁護活動の目的

依頼人が被疑者として逮捕・勾留された場合の弁護活動の目的は,以下の3つです。

1.身体拘束からの解放

被疑者が逮捕されてから検察官による処分が決まるまでの間,1つの事件について最大で23日間,逮捕・勾留により警察署等で身体拘束されることがあります。また,被疑者が起訴された場合には,その後,裁判まで数ヶ月にわたって勾留により身体拘束されることがあります。

こうした長期間の勾留による身体拘束は,被疑者として逮捕・勾留された依頼人に大きな肉体的・精神的苦痛を課すものです。また,仕事などへの影響が出てしまうこともあります。身体拘束からの解放は,逮捕・勾留された依頼人にとって,非常に重要な問題です。

2.不起訴,起訴猶予,軽い罪での起訴

不起訴処分は,嫌疑不十分などの理由で,検察官が被疑者を起訴しない処分です。依頼人が犯罪の嫌疑をかけられて被疑者として逮捕・勾留された場合でも,最終的に不起訴になれば,依頼人には前科が付きません。また,長期間に渡って裁判への対応を強いられることもありません。そのため,不起訴になることには,依頼人に大きなメリットがあります。

起訴猶予処分は,犯罪を犯したことが認められる場合でも,事件の内容の他,被害者の意向や生活状況等の事情から,刑事処罰は不要であるとして,検察官が被疑者を起訴しない処分です。嫌疑不十分による不起訴の場合と同様,前科が付かず,裁判に対応しなくてよいなどのメリットがあります。

また,起訴されてしまった場合でも,起訴の対象となる罪が軽ければ,裁判で科される刑も軽くなるのが通常です(例えば,「強盗」を疑われて逮捕されたが,「窃盗」として起訴されるような場合)。そのため,軽い罪で起訴されることも,依頼人にとってのメリットがあります。

3.公判に備えた準備

被疑者が逮捕・勾留された刑事事件の中には,重大な事件の場合等,被疑者の起訴が避けられないケースがあります。そうした事件では,将来の公判に備えた準備も弁護活動の目標になります。具体的には,公判で依頼人に不利益となる証拠が作成されないようにすることや,依頼人にとって有利な証拠の収集を逮捕・勾留段階から目指すことになります。

ベーシックな弁護活動

依頼人の方が被疑者として逮捕・勾留された場合,弁護活動の目的を達成するために,弁護人は,以下のような活動をすることになります。

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多数回接見(面会)し依頼人の話を聞くこと

依頼人が逮捕,勾留された後,適切な刑事弁護活動をするためには,依頼人の意向をしっかりと把握し,事件に関する事情を十分に聞き取る必要があります。そのため,警察署等で拘束されている依頼人に弁護人が何度も接見し,詳しく話を聞くことが,適切な刑事弁護活動には不可欠です。そして,詳しく話を聞いて依頼人の状況を把握して,適切なアドバイスをすることになります。

多くの依頼人の方にとって,逮捕・勾留は初めての経験です。その後の手続がどのように進むかも分かりません。弁護人は,その時依頼人が置かれた状況や,刑事手続の流れについて,法律の専門家として分かりやすく適切な説明をします。また,最終的にどのような処分になるか,弁護人自身の経験や知識から,事件の見通しを説明することもあります。

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身体拘束からの解放に向けた活動

身体拘束が続くことは,依頼人にとって大きな不利益です。事案の内容等に応じて,長期間の身体拘束を避けるため,弁護人が様々な活動をしていくことになります。

まず,依頼人が逮捕された段階で弁護人が依頼を受けた場合,勾留を阻止するための申入等をします。勾留が決定された場合には,決定に対する不服申立(準抗告)等を行います。依頼人にとっては,1日でも早く開放されることが,非常に重要です。特に,逮捕・勾留直後は,身体拘束からの解放を目指して,弁護人に迅速な動きが求められる場面です。

また,依頼人が起訴された後には,保釈の請求を行って,依頼人の身体拘束からの解放を図ることになります。依頼人が保釈をされて,普段通りの生活を取り戻すことで,その後の裁判にも落ち着いて望むことができます。

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被害者との示談等に向けた活動

被害者のいる事件で,依頼人の方が容疑を認めている場合には,弁護人が被害者との示談の話し合いを進めることが重要です。被害者との示談ができれば,起訴猶予処分などにより,依頼人が起訴をされないことがあります。

被害者との示談交渉について,決まったやり方はありません。事件の内容や,被害者の感情等,様々な事情を考慮して,状況に応じて弁護人が判断して動きます。重要なことは,検察官の処分が決まる前の段階では,迅速な対応が弁護人に求められるということです。示談の成立が1日遅くなるだけで,依頼人が起訴されてしまうかもしれません。弁護人は,示談成立が可能な事件の場合には,迅速な被害者対応を行うことになります。

問題のある弁護活動
  • 依頼人との十分な接見(面会)を行わない
  • 依頼人の言い分をきちんと聞かない
  • 依頼人が不当に身体拘束されている場合に,勾留決定に対する準抗告や保釈の請求等を速やかに行わない
  • 依頼人が容疑を認めているのに,被害者との示談の話し合いを進めない

プロフェッショナルの弁護活動

ベーシックな弁護活動は,多くの弁護人が実践している一般的な内容と考えられます。当サイトに所属する弁護士は,さらに一歩進んで,以下のような専門的・先端的な弁護活動を行います。

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取調べ対応に関する適切なアドバイス

依頼人が逮捕・勾留されてしまった場合,捜査機関(警察,検察)からの取調べを連日のように受けることになります。取調べに対してどのように対応するかによって,検察官の処分(裁判になってしまうかどうか等)や,裁判の結果(有罪になるか無罪になるか等)が大きく変わることがあります。

そのため,弁護人が,依頼人に対して,取調べへの対応を適切にアドバイスする必要があります。事実を争う否認事件や,事案が重大な事件などでは,黙秘権(取調べに対して供述をしない権利)の活用が視野に入ります。

また,最近では,取調べの録音・録画が広まっており(一部の事件では、取り調べの録音録画が義務付けられています),これに関する対応も検討が必要です。しかし,日々変わりゆく状況の中で,こうした様々な点について適切にアドバイスすることは容易ではありません。事件の内容,取調べの状況等,様々な要素を踏まえた判断が必要です。

そのため,弁護人が取調べ対応について適切なアドバイスをするためには,豊富な弁護経験や,法令等に関する的確な知識が必要です。多くの事例を経験し,取調べ対応がどのような結果に結びつくか実例から学んでこそ,的確な対応をアドバイスできます。

そして,不当な取調べが行われていると判断した場合には,弁護人から捜査機関に対し,適切な抗議等を行います。法令等に精通し,最新の改正もしっかりと把握してこそ,そうした十分な弁護活動ができます。

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弁護人による証拠収集

依頼人が逮捕・勾留されてしまった場合,不起訴処分の可能性を高めるために,弁護人による積極的な証拠収集が必要な事案があります。

刑事弁護の知識・経験が豊富な弁護人は,裁判所を通じた証拠保全を行ったり,独自に関係者と接触したりして,依頼人に有利な証拠収集に務めます。時には,警察・検察の捜査権の及ばない海外から証拠を集めることもあります。

適切な証拠収集は,非常に困難な作業です。証拠がどこにあるのか,どのような内容なのか,推測するしかありません。その時に役立つのは,刑事弁護人としての知識や経験です。過去に同じような事例で証拠を取り扱った経験,証拠収集のための適切な手段に関する知識。これらを備える専門的で経験豊かな弁護人にこそ,適切な証拠収集は可能になります。

point.2

容疑を争う事件の
裁判で闘う

弁護活動の目的

依頼人が容疑を争っていても,起訴されて,裁判になってしまう場合があります。その場合の弁護活動の目的は,無罪の判決を得ることです。あるいは,一部の事実を争い,より軽い罪の判決が目標になる場合もあります(殺人の容疑がかけられている場合に,殺意を否定し,傷害致死罪の成立を主張する場合等)。

ベーシックな弁護活動

容疑を争う事件では,まず,検察官が裁判所に取調べることを求める証拠書類や証拠物の内容を検討することになります。証拠書類の内容に依頼人の主張と矛盾するものはあるか,証拠物は事件と関係があるのか,などといった観点から十分に吟味します。証拠書類については,通常,依頼人にも内容を確認してもらいます。

また,被害者,目撃者,共犯者等事件の関係者の話が依頼人の主張と食い違う場合には,法廷での証人尋問が行われることが多くなります。弁護人は,関係者に対する反対尋問を行い,証言の信用性を弾劾することを目指します。

そして,依頼人の主張を法廷で話してもらうことになります(被告人質問)。弁護人からの質問に依頼人が答える形で進むため,依頼人の話を的確に引き出せるような質問をします。

裁判の最終段階では,検察官が論告求刑を行い,弁護人が無罪(あるいは,軽い罪)であることについて,法廷で意見を述べます(最終弁論)。証拠書類の内容や証人尋問の結果等を踏まえて,なぜ無罪になるのか,説得的な意見を述べることが重要です。

問題のある弁護活動
  • 検察官の請求する証拠書類等を十分に検討しない
  • 検察官に対して証拠開示を求めない
  • 必要な裁判書類,検察官からの開示記録等を依頼人に差し入れない
  • 依頼人の主張と内容が食い違う証拠書類について,裁判への提出に安易
    に同意してしまう
  • 被告人質問のための打合せを十分にしない
  • 尋問技術がない

プロフェッショナルの弁護活動

容疑を争って無罪となる事例の数は,全体から見ればそれ程多くはありません。一般的な水準の弁護活動では,足りない場合があります。無罪の判決を獲得するために重要なのは,①徹底的な証拠開示,②一貫した弁護戦略,③卓越した公判弁護技術を駆使した公判活動です。

当サイトに所属する弁護士は,日弁連や所属単位会で,公判前整理手続,証拠開示,法廷弁護技術等の研修の講師を担当していますし,弁護活動に関する論文・文献等を多数発表し,日々,刑事弁護経験豊富な弁護士同士で研究活動も行っています。

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徹底的な証拠開示

警察や検察は,捜査段階で,事件に関する証拠を収集します。容疑を争う事件,特に重大事件の場合には,捜査機関により大量の証拠が収集されることになります。しかし,そこで集められた証拠は,自動的に依頼人や弁護人の手には届きません。弁護人から検察官に開示を求めていかなければ,証拠開示が行われない場合がほとんどです。捜査機関の保有する証拠には,依頼人に有利な証拠が存在する可能性が十分にあります。

容疑を争う事件を闘う場合には,検察官に対して,徹底的に証拠開示を求めていく必要があります。適切に証拠開示を求めていくには,公判前整理手続や期日間整理手続を利用することが有益です。事件がこうした手続に付されれば,検察官が弁護人に対して一定の証拠を開示すべき義務が生じます。捜査機関がどのような証拠を持っているか,弁護人は,開示前に見ることができません。豊富な経験を持つ刑事弁護人でなければ,適切に開示請求を行うことはできません。

また,公判前整理手続等における証拠開示については,多くの裁判例等が存在し,理論的な問題も多い分野です。適切な証拠開示を行うためには,専門的かつ先端的な法知識も求められます。

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一貫した弁護戦略

容疑を争う事件の弁護活動は,一貫した弁護戦略に基づくものでなければなりません。場当たり的な弁護活動では,良い結果は得られません。弁護活動には様々な局面がありますが,常に,全体を見据えた明確な戦略が必要です。例えば,証人尋問を実施する段階から,最終的に弁護人としてどのような意見を述べるかをイメージして,尋問内容を考えなければなりません。

そして,弁護戦略は,できるだけ早期に定める必要があります。手続の最初の段階で的確な方針を定めてこそ,その後の一貫した弁護戦略に基づく弁護活動が可能になります。

早期に的確な方針を定めるために必要なのは,刑事弁護に関する十分な知識と経験です。刑事事件に精通した弁護士は,依頼人の話や証拠の内容等から,早い段階でその事件についての適切な見通しを持つことができます。そして,適切な弁護戦略を立てて,一貫した方針に基づいた弁護活動を行うことができます。

容疑を争う事件で弁護士に求められるのは,早期に的確な方針を定め,一貫した弁護戦略に基づいて刑事裁判を闘っていくことです。それができるのは,容疑を争う事件を多く経験してきた弁護士だけです。

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卓越した法廷弁護技術

刑事裁判では,実際の法廷での弁護活動が非常に重要です。どんなに入念な準備をしても,法廷での活動に失敗すれば,望ましい成果は得られません。この傾向は,一般の人が参加する裁判員裁判で,より顕著になります。裁判員は,法廷で初めて事件に触れ,判断をすることになります。分かりやすく,説得的な法廷弁護活動をしなければ,裁判員の理解を得ることはできません

適切な法廷弁護活動に必要なのは,そのための技術と知識です。技術や知識は,一朝一夕で身につくものではありません。実際に多くの刑事事件を経験し,試行錯誤を繰り返す中で,積み重ねられるものです。また,研修などに参加し,先端的な議論に絶えず触れることで,研鑽していくものです。

日々の努力により,法廷弁護のための技術と知識を極めてこそ,容疑を争う事件で成果を得られることになります。そうした卓越した法廷弁護技術を持っているのは,刑事弁護を専門的に取り扱っている弁護士だけです。

point.3

執行猶予や
有利な刑の獲得を
目指す事件の弁護活動

弁護活動の目的

容疑を争わない事件では,弁護活動の目的は,依頼人にとって少しでも有利な刑を獲得することです。事案によっては,執行猶予付きの判決を目指すことになります。実刑判決が避けられない場合には,刑期を短くすることを目指します。

ベーシックな弁護活動

依頼人の刑を軽くするための弁護活動の1つに,犯罪をしてしまった依頼人が反省していることを裁判所に理解してもらうことが挙げられます。例えば,被害者に宛てた謝罪文を依頼人に書いてもらったり,弁護士が依頼人と事件の原因などについて話し合います。

裁判では,依頼人に自分の口から事件のことや現在の心境等を話してもらい,反省の気持ちが裁判官等に伝わるようにします。また,家族などに情状証人として出廷してもらい,裁判後の依頼人に対する監督を約束してもらうことも多くあります。

問題のある弁護活動
  • 事件のことや反省の気持ちについて,依頼人と十分に話し合わない
  • 裁判の場で,弁護士が依頼人に自分の考えを押し付け,依頼人自身の言
    葉で話させない
  • 示談交渉を粘り強く行おうとしない
  • その事件の特徴を考えずありきたりな弁護活動しかしない

プロフェッショナルの弁護活動

依頼人が反省の態度を示したり,家族が監督を約束するだけでは,刑は大きく変わりません。

量刑の重さを決める中心となるのは,事件そのものに関する事情(なぜ事件を起こしたか,どのような事件を起こしたか,結果はどのようなものであるか,など)です。反省や謝罪といった事後的な事情は,刑を決める上で,付随的に考慮されるにすぎません。したがって,依頼人にとって本当に有利な結果を得るためには,事件内容にしっかりと踏み込んだ弁護活動を行う必要があります。

例えば,事件に至った動機・経緯の中で,依頼人に有利な事情があれば,しっかりと主張しなければなりません。軽い刑を目指す弁護活動において特に重要になるのは,①量刑理論に関する的確な理解と弁護実践,②事実を争う量刑弁護,③他の専門家・専門機関との連携による環境調整です。

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量刑理論に関する的確な理解と弁護実践

量刑(どのくらいの刑にするか)の判断には,一定のプロセスがあります。例として,タクシー強盗をして運転手に怪我をさせてしまった強盗致傷事件で,どのように刑の重さが決まるかを説明します。

まず,同じような類型の事件でどの程度の刑が科されるのか,大まか目安を決めます。強盗致傷事件であれば,被害者が亡くなっている強盗殺人事件に比べれば,刑の目安は軽くなるでしょう。また,同じ強盗致傷事件の中でも,重大事件の多い銀行強盗のような場合に比べれば,タクシー強盗での刑の目安は軽くなるはずです。

次に,その事件の具体的な特徴を踏まえて,刑の大枠(例えば,「懲役●年~●年」という具体的な刑の幅)を決めることになります。タクシー強盗の場合,刃物などの危険な凶器を使っていれば,より重い方に刑の幅は位置付けられることになり,計画性のない事件であればより軽い方に刑の幅が位置付けられるのが通常です。

最後に,事件そのもの以外の事情を考慮して,最終的な刑の重さ(例えば,「懲役●年」という結論)が決められることになります。タクシー強盗の事件では,被害者との示談などが成立していれば,刑を軽くする要素として考慮され,最終的な刑が少し軽くなると考えられます。

このような量刑判断のプロセスに関する理解は,量刑が問題になる事件の弁護活動に不可欠です。量刑理論を的確に理解せずに弁護活動を行っても,裁判所の量刑判断に十分な働きかけをすることは難しくなります。

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事実を争う量刑弁護

依頼人が容疑自体を認めている場合でも,事件の具体的な内容や事件に至った経緯などについて,依頼人の主張と検察官の主張が食い違うことがあります。例えば,数名で実行された窃盗事件で,検察官は,依頼人が主犯格であると主張しているものの,依頼人は誘われてやっただけだと述べているような場合があります。

量刑の重さを決める中心となるのは,事件そのものに関する事情です。事件の具体的な内容や事件に至った経緯の違いによって,量刑が大きく変わることもあり得ます。上記の例でいえば,依頼人が主犯格と判断されるか,誘われて加わっただけと判断されるかで,刑の重さも変わってくるはずです。

したがって,軽い刑を目指す事件においても,事実を争うことをためらうべきではありません。

事実を争う量刑弁護で求められるものは,容疑を争う事件の弁護活動の場合と共通します。徹底的な証拠開示や一貫した弁護戦略が不可欠になります。容疑を認めているからといって,すべての事実を認めるわけではなく,争うべき点はきちんと争うこと。こうして弁護活動を行うことが,依頼人にとってより良い結果をもたらすために不可欠です。

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他の専門家・専門機関との連携による環境調整

刑事事件を起こしてしまう人の中には,貧困などの社会的ハンディを抱えていたり,何らかの障がいを持っている場合があります。そのような場合,事件の原因を解明するために,精神医学や福祉機関等の専門家による専門的知見,サポートが必要になることがあります。

また,依頼人本人の反省や家族のサポートだけでは,再犯防止策として不十分な場合があります。専門家・専門機関による適切な支援が求められます。そのような事件で弁護人に求められるのは,依頼人と他の専門家・専門機関をつなぐ役割です。

そして,そこで得られた成果を刑事裁判に提出することで,依頼人のために有利な刑を獲得することができます。判決後の適切な引受先の機関が見つかることで,実刑を避けて執行猶予になるような事例もあります。

弁護人には,様々な専門家・専門機関との連携を調整する能力が必要になります。刑事弁護に精通し,経験豊富な弁護士には,それぞれ経験を通じて築いた専門家とのネットワークがあり,それを活用することができます。