弁護士費用
刑事事件においてかかる費用について説明していきます。大きく弁護士に支払う費用とそれ以外の費用に分かれます。
point.1
弁護士に支払う費用
弁護費用の決め方は大きく着手金方式とタイムチャージ方式に分かれます(両者を併せる形もあります)。刑事事件を受任する多くの弁護士は着手金方式を採用しています。
着手金 |
着手金とは弁護活動をはじめるにあたって発生するお金です。弁護活動そのものの対価となります。 刑事事件は,捜査段階,第一審,控訴審,上告審と手続が段階ごとに分かれています。通常はその段階ごとに発生します。事件の重大性,認めるのか争うのか,などによって金額が変わってきます。また,どこまでの弁護活動が含まれるかも弁護士によって異なるので注意が必要です。たとえば保釈請求などの身体拘束からの解放手続に別途着手金が必要であるなどという事務所もあります。 着手金は弁護活動の対価なので仮に成果が出なかったとしても原則として返還はされません。 |
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報酬 |
報酬は,弁護活動が終了したときに発生するお金です。無罪,執行猶予,求刑からの減刑など一定の成果が出た場合に発生するもので,最初の契約時に決めておきます。取り決めた成果が発生しなければ報酬は発生しません。 |
日当 |
日当は遠隔地に出張に行った場合などに発生するものです。どのような場合に日当が発生するかは弁護士により様々です。当初の着手金では公判回数3回までなどとして,それを超える部分は遠隔地でなくても日当が発生するという事務所もあります。 |
実費 |
交通費や通訳・翻訳費用,刑事裁判の記録の謄写(コピー)費用などです。刑事裁判では警察や検察が捜査して集めた証拠は自動的に見ることはできません。弁護人が「謄写」といって検察庁にコピーしてもらうことになります。このコピーが1枚数十円かかります(地方によって異なります)。 重大な事件で記録の量が多いとコピー代だけで数万円から数十万円になることもあります。国選事件であればこのコピー費用はご自身でご負担いただく必要はありませんが,私選弁護を依頼するときには記録の謄写費用がいくらかかるかも考慮してください。 |
point.2
弁護費用以外に
発生する費用
保釈金 |
保釈金とは保釈が認められた場合に,裁判所に納める費用です。通常は150~300万円ほどかかります。保釈金は判決までの間,逃亡を防止するために裁判所に納めるお金で,原則として判決後に返還されます。 |
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罰金 |
罰金は刑事罰の一種で,比較的軽い罪に規定されています。罰金処分になることで正式な刑事裁判を回避できることもあります。 |
示談金 |
被害者がいる犯罪などで,負わせた損害を弁償するための費用です。被害者への弁償の有無や示談の成立の有無は,刑事処分を決める上で重要な要素です。 |
私たちの約束
弁護士の費用は昔は一定の基準が決められていました。その基準は廃止され,今は弁護士ごとに,あるいは法律事務所ごとに自由に決められます。各事務所が自由に費用を決められるということは,利用者の選択の自由をもたらし,必要な競争が生まれることなどメリットもあります。しかしながら不当に高額な弁護士費用を請求するケースや利用者と利益相反の関係に立つようなケースがあります。
決して安ければよいというわけではありません。私たちも自分達の刑事弁護の専門性に誇りを持ち,その弁護技術を提供するのに必要な額を設定しています。このサイトに登録する弁護士,法律事務所の弁護士費用も同一ではありません。それぞれの事務所ごとに異なります。しかしこのサイトで弁護士を紹介するに当たっては,次の要件を満たすことを条件にしています。
1
接見回数を限定しない
法律事務所の中には,当初の着手金の中に含まれるものとしては接見回数○回まで,としているような事務所があります。私たちはそのような費用の決め方には賛成できません。
接見は弁護活動の全ての基本となるものです。そして接見がいつどれくらい必要になるかは,刑事手続の中で流動的で,最初に決めておくことは困難です。弁護活動に必要なときに必要なだけ接見をしなくてはなりません。
もし,規定回数を超えて料金が発生するとすれば,弁護士は不要な接見をするかもしれません。あるいは,依頼人の方が,○回を超えたら別料金が発生してしまうことを恐れて弁護士を呼ぶことを躊躇してしまうかもしれません。つまり,接見回数を○回までとすることは適切な弁護活動を阻害する要因となってしまうのです。ただし,遠隔地に接見にいかなければならないときは別途請求することがあります。
2
保釈などの
身体拘束解放活動に
別途着手金は発生しない
拘束されている状態から釈放させるために,保釈請求,勾留に対する準抗告などの手続を弁護士が取ることがあります。法律事務所の中には,当初の着手金とは別に,身体拘束解放活動の着手金を要求する事務所があります。
しかし,私たちはひとたび弁護士として受任すればその依頼人の利益のためにありとあらゆる手段をとることが当然だと考えています。たとえば事件は受任したけれども,保釈請求の着手金が払われないために保釈請求をしないとすれば,適切な弁護活動をしているとはいえません。
3
保釈金を基準として
保釈の報酬を決めない
保釈を請求するために別途の着手金は必要ない,ということが私たちの約束です。
他方で,保釈が認められて釈放された,という場合にその報酬を別途取り決めておくことには反対しません。しかしその場合でも,それは固定額であるべきで,保釈金の○%というように割合で決めることには賛成できません。保釈金は裁判所に納めるお金ですが,もし割合で決めるということになるとすれば,弁護士にとっては少しでも保釈金が高い方が自分の報酬が高くなります。依頼人やその家族としては,裁判所に納めなければならない保釈金の額は,低い方がよいはずです。しかし自らの報酬が低くなってしまうような活動を一生懸命やるでしょうか。本来依頼者の利益を守るべき弁護士の立場と相容れない状態(利益相反)になってしまうのです。
4
示談交渉に着手金は
発生しない
罪を犯したことを認めている場合,示談交渉は刑事弁護活動において中心的な活動の一つです。被害者に謝罪する,被害を弁償する,被害者に宥恕してもらうことは依頼人の刑事処分を決める上で重要な要素だからです。したがって,最初にもらう着手金の中に示談交渉は当然に含まれていると考えるべきです。
法律事務所の中には,示談交渉に別途着手金を設けたり,被害者ごとに着手金を要求する事務所がありますが,もし最初の着手金は払うけれども示談交渉の着手金が払われないと示談交渉を行わないのでしょうか。もしそうだとすれば,弁護人の誠実義務(依頼人のためにできる限りの弁護活動をする義務)に違反するでしょう。ただし,交渉の範囲を超え,民事訴訟に発展するような場合には,刑事事件の範囲内とはいえず,民事訴訟の着手金が発生するものと考えます。