捜査機関は,事件について捜査をしていく中で,多くの証拠を集めていきます。令状を取得した上で,強制処分(捜索・差押等)を行うこともでき,強大な権限の下,多数の人員を駆使して,広い範囲で証拠収集を行っていくことになります。
一方,弁護人も,可能な範囲で証拠収集を図りますが,証拠提出を強制する権限などはなく,捜査機関と比較して証拠収集が容易でないのが実情です。
そして,弁護人から私人や団体などに対して証拠の提出などを求めても,応じてもらえないことも少なくありません。
そのような場合に,弁護人としてとることのできる方法が,いくつかあります。
まず,所属する弁護士会を通じて,弁護士法に基づく照会をかける方法があります。この照会に対して,紹介先は,報告義務を負っていると一般的に考えられており,実際上も,弁護士会という公共性のある団体からの照会であることから,応じてもらえることが多くあります。
また,裁判所を通じて,公務所照会という手続を取ることもできます。これが実現すれば,裁判所からの照会であるため,紹介先が回答を拒否する例はさらに少なくなると思われます。
弁護人に与えられた証拠収集の手段は多くありませんが,弁護活動の中では,限られた手段の中でもできるだけ多くの証拠を集められるよう努力することになります。
法律事務所シリウス 弁護士 中井