刑事裁判の報道なので,検察官が間接事実による立証を試みているなどと言われることがあります。
この間接事実とは,刑事裁判における専門用語の1つです。
刑事裁判では,無罪推定の原則があり,検察官が被告人が犯罪を犯したことが間違いない,ということを立証しなければなりません。
仮に被告人が罪を犯したことを認めていれば話は早いですが,被告人が罪を犯したことを争っている場合,検察官は証拠によって,立証しようとします。
このうち,例えば,犯行そのものが映っている防犯カメラがあるとか,直接目撃した被害者や目撃者などがいる場合には,その証拠が信用できるとなれば犯罪を証明することができます。そのような証拠を直接証拠といいます。
これに対し例えば現場から被告人の指紋やDNAが発見されたという事実は,それ自体から犯人であることを示すことにはなりません。
仮に被告人が,犯行時とは別の機会にその場所に行ったことがあり,そのために指紋やDNAが検出されたという可能性があるからです。
このようなその事実自体が存在しても,それだけで直ちに被告人が犯人であることを照明することが出来ない事実を間接事実,といいます。
検察官は,いくつかの間接事実を立証し,それらによって被告人が犯罪を犯したことを立証しようとするのです。
この間接事実による立証は,そもそもその間接事実が存在するのか否か,存在するとしてそれが被告人が犯人であることを示すのか,示すとしてどの程度の強さがあるのかなど難しい判断が求められることになります。
東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也