近時,インターネット上の掲示板などで法律的事項に関する質問を投稿し,これに回答がされるというのを目にします。誰でもアクセスできる掲示板で行われていることもありますし,中には弁護士のポータルサイトが「弁護士が回答する」と銘打って法律相談掲示板を運営していることもあります。
ただ,こうした掲示板での相談には非常に大きな問題があります。
それは,書き込んだ内容が後で捜査機関などによって発覚してしまうことがあるからです。たとえば,本屋で万引きを疑われてしまって逮捕され,冤罪だ,やっていないと主張するとしましょう。そういう場合,その店舗に行ったことを含めて黙秘権を行使するほうが防御上適切な場合があります。しかしたとえば掲示板で「万引きを疑われています。実際その本屋にはいたんですが,やってもいないのに疑われています。どうしたらいいでしょうか」という投稿をしていた場合,このインターネットの書き込みの履歴が捜査機関によって差し押さえられ,「本屋にいた」ことを立証する不利な証拠として扱われてしまうことも否定できないのです。これは,匿名であっても同じです。
このように,インターネット上の掲示板で法律相談することは問題があります。一般的な法律問題など,問題なく回答できる質問もありはしますが,賢明な弁護士であれば,そのような掲示板での法律相談を勧めることはしないでしょう(なお民事事件でも同じです。事件の相手や相手弁護士が見ているかもしれないのですから)。
具体的な案件のご相談は,掲示板よりも,守秘義務のある弁護士に直接相談するのがベターです。
東京ディフェンダー法律事務所 弁護士山本衛
刑事弁護ブログ
2019.08.21 | 刑事弁護コラム |