刑事裁判で責任能力が争われることがあります。
責任能力とは,精神の障がいによって,善悪の判断や行動を制御することができないとき,犯罪を起こしたのは病気の影響によるものですから,その影響の程度によって,心神喪失(無罪)又は心神耗弱(減刑)となるものです。
病気があったか,その病気の影響がどのようなものであったかは,精神科医による鑑定が必要ですから,責任能力が疑われるときには,鑑定が行われることが多いのです。
この精神鑑定は,捜査機関が精神科医に依頼して行う場合と,裁判所が依頼して行う場合があります。
裁判所が行う場合,通常の裁判ですと,公判が開かれて審理が進んだのち,鑑定を実施します。
しかし,裁判員裁判は,市民が選任されて集中的に審理が開かれるので,裁判が始まってから鑑定を行っていては,間に合いません(通常鑑定には2~3ヶ月を要します)。
そこで,裁判員裁判では法律により特別に,公判が始まる前の公判前整理手続の最中に,鑑定を行うことができるようにしました。
それが裁判員法50条です。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
第五十条 裁判所は、第二条第一項の合議体で取り扱うべき事件につき、公判前整理手続において鑑定を行うことを決定した場合において、当該鑑定の結果の報告がなされるまでに相当の期間を要すると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判前整理手続において鑑定の手続(鑑定の経過及び結果の報告を除く。)を行う旨の決定(以下この条において「鑑定手続実施決定」という。)をすることができる。
この50条鑑定を公判前整理手続の中で行うことにより,裁判員が集まる公判では,鑑定の結果が証拠として提出され(鑑定書である場合と証人である場合とがあります),集中審理を行うことができるのです。
東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也