刑事弁護ブログ

2020.09.16 刑事弁護コラム

文書偽造の犯罪

文書偽造罪という犯罪があります。
文書偽造というと,虚偽の文書を作成した罪ですが,虚偽の文書には2種類あります。
1つは,名義人を偽ることです。勝手に他人名義で文書を作成することです。
もう1つは,内容虚偽の文書です。
これらのうち,公文書の場合は,いずれもが罰せられますが,私文書(一般の市民が作成する文書)は,名義人を偽る場合のみ処罰され,内容虚偽の文書を作成することは犯罪にはなりません。
公文書は類型的に重要な文書が多く,かつ公文書に対する信用が高いので,それを保護する必要があります。
他方で,一般人が作成する文書には多様なものがありますので,内容虚偽の文書を処罰することになれば,範囲が拡大しすぎてしまうのです(例えば日記にウソを書いたら私文書偽造になりかねません)

 刑法159条1項
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

 従って,例えば履歴書にウソを書いたりしても,それ自体は処罰の対象にはなりません。

 ただし,虚偽の文書を使って詐欺を行ったりすれば別途詐欺罪などに問われるのは言うまでもありません。

 東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也