家族等の関係者に,有利な証言をしてもらうことがあり,そのような証人を情状証人と呼んでいます。
通常,公訴事実に争いがない事件であれば,第1回公判において,情状証人の証人尋問を行うことも多いので,そのような場合,情状証人も,第1回公判の開廷時から裁判を傍聴していますが,そのことが問題となることはほとんどありません。
しかし,争いのある事件で,事件に関する事実関係を証言する場合は,証人尋問が終わるまで,当該事件の傍聴が認められません。刑事訴訟規則123条2項は,「後に尋問すべき証人が在廷するときは,退廷を命じなければならない。」と規定しています。証人が証人尋問前に他の人の証言を聞くなどして,記憶のとおり,話しにくくなることを防ぐための規定です。
刑事訴訟規則123条2項は,「後に尋問すべき証人」と記載するだけであり,情状証人であっても,「後に尋問すべき証人」ですから,退廷が命じられるように思われます(実際,この規定の解釈に忠実に,情状証人であっても,第1回公判の開廷時から傍聴を認めない裁判官もいます。)。
しかし,情状証人については,検察官としても,それまでの公判審理を傍聴したとしても弊害が考えられず,また,かえって,被告人の犯行に関する証拠を情状証人にも聞いて欲しいということもあるように思われます。
そのような実質的な判断があり,情状証人については,刑事訴訟規則123条2項に基づく厳格な運用がなされていないのが現状です。
なお,後に証人となる被害者が,被害者参加した場合に,第1回公判の最初から傍聴できるのか,という問題もありますが,少なくとも被害者が事件に関する事実関係に関して証言する証人となる予定の場合は,刑事訴訟規則123条2項の趣旨からしても,開廷当初からの傍聴を認めることは相当ではなく,証人尋問が終わった段階から被害者参加人として当事者席からの傍聴を認めることが相当だと考えられます。
実際,当職が担当した事件では,裁判所は,争いのある事実関係に関する証言をする予定の被害者に当初から被害者参加人として傍聴を認める扱いをしようとしましたが,当職が異議を述べたところ,証人尋問が終わるまでは,傍聴できない扱いとなりました。
公開法廷で,証人が証人尋問前に傍聴できるかどうかについて問題になることは多くありませんが,刑事訴訟規則には厳格なルールが定められており,そのことに注意する必要があります(証言後,傍聴することは何の問題もありません。)。
法律事務所シリウス 弁護士 菅 野 亮