控訴審や上告審で国選弁護人として選任されることがありますが,日本の国選弁護人に対する報酬は極めて低額であると言わざるをえません。
現在国選弁護人に対する報酬は,日本司法支援センターが算定することになっていますが,弁護内容に関わって算出することが困難であることから,一律の報酬基準が設けられ,算定されています。
そこでは,記録の分量によって基礎報酬が段階的に決められ,公判の時間と回数によって報酬が加算されていくのが基本になります。
しかし,裁判員裁判の導入とともに,それまでより一層第1審重視の傾向が顕著となり,大多数の事件は,第1回で結審し,第2回で判決となり,控訴審で新たに尋問期日などが別途行われるケースはほとんどありません。
また,被疑者段階と異なり,接見は報酬加算対象ではありません。
記録の分量によって基礎報酬が加算される仕組みになっているのですが,裁判員対象事件などは,裁判員が理解できる分量にしようと,証拠は絞られ簡略化されるために,訴訟記録はとても少ないのが通常です。
検察官から開示された記録は10000丁を超えていても,公判の記録は1000丁程度ということは珍しくありません。
控訴審で,新たに弁護人に選任された場合には,もちろん原審弁護人から開示記録なども引継,検討して活動しますから,弁護人の活動を適切に反映した報酬体系になっていないのです。
典型的な事件であれば10万円もいかない報酬です。
記録の検討,被告人との接見,関係者への聴き取り,現場調査,公判立会など,否認事件ともなれば,数十時間,100時間を超える活動であることも珍しくありません。
それで,報酬が10万もいかないとなれば,最低賃金の時給にすら満たない場合もあります。
刑事裁判を活性化させるためには,国選弁護人の報酬の増額は不可欠です。
東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也