専門家が行った鑑定の結果である。そういわれれば,素人からするとその結果が争えないもののように思えます。
しかし,検察官が請求する専門家の鑑定書の証明力を争う場合,弁護人の弁護活動としては,別の専門家からも意見を聞くようすることが考えられます。
例えば,検察官が請求する専門家の繊維鑑定において,被告人の手指から採取された繊維は被害者とされる女性の下着の繊維が類似しているとの判断がなされた事案がありました。
しかし,弁護人が繊維に関する別の専門家を探してその意見を聞いたところ,繊維の外観からその由来を特定することは非常に困難であるとのことでした。
検察官が請求する繊維鑑定書は,顕微鏡で目視して繊維の形状や色合いから判断するものであるとのことでした。
そして,繊維の形状については,商品として取引される繊維はある程度定番化された仕様がもとめられるもので,異なる製造元でも同じような繊維が使用されることから,特殊な場合を除いて製造元や由来を特定することが困難であるとのことでした。
また,色合いについても検察官が請求する繊維鑑定書は目視による主観的な判断によるものである上,対象となった繊維素材自体が一般的な繊維素材で手指に接触する機会が多く,他の繊維製品に由来する可能性が十分考えられるとのことでした。
こうした弁護人が意見を聞いた専門家について,弁護側の証人として証人尋問を行い証言をしてもらいました。
東京ディフェンダー法律事務所 弁護士 藤原大吾