刑事弁護ブログ

2024.02.21 刑事弁護コラム

証人テストの際に検察官が作成したメモを開示させた事例

検察官は、検察側証人が法廷で証言する前に、検察庁などでその証人と打ち合わせをします。一般的にこれを「証人テスト」と言います。

証人テストにおいては、検察官はあらためて証人から話をきき、どのような証言をするか把握します。捜査段階から、証人の話が変遷することは少なくありません。重要かつ核心的な部分で変遷することもあります。さらに、捜査段階で作られた調書では、証言の細かなニュアンスが十分予測できないこともあります。ですから、証人に対して効果的な反対尋問をするにあたり、証人テストで証人がどのような話をしたか把握することは、大きなアドバンテージになります。しかし、検察官が証人テストの様子を映像で撮影するなど、客観的に記録することはほとんどありません。

 

検察官がこの証人テストの際に作成した手控えのメモが、公判前整理手続で弁護人に開示された事案があります。弁護人が証拠開示請求を検察官に対して行い、検察官から開示を拒否されたため、裁判所に対して、証拠開示命令を申し立てました。裁判所は、以下のように述べて、検察官に対し、証人テストの際に作成したメモを開示するように命じました。

「(証人テストの際に作成したメモは)証人尋問の準備(刑事訴訟規則191条の3)として作成されたものであるとしても、弁護人の予定主張の明示や弁号証の請求を受けて補充して行った捜査の過程で作成され、検察官が職務上保管しているものと認められるから、刑事訴訟法316条の20第1項により、証拠開示命令の対象となり得る証拠に該当する」。

 

証人テストの際に作成された文書が弁護人に開示されるケースは決して多いものではありません。これを尋問前に確認できたことにより、弁護人が請求した証拠をみた証人の反応や、証人が捜査段階から供述を変えるか否かについて正確に予測することができ、的確な尋問方針を立てることができました。

 

東京ディフェンダー法律事務所