事案の紹介
台湾人の依頼人がスーツケースを日本に運び入れ,その中から覚せい剤が発見されたという覚せい剤密輸事件で,依頼人が覚せい剤の存在を知らず,同行者の不自然な行動から考えても依頼人が騙されていた疑いがあるとして無罪を主張したが,認められずに有罪となった事例
弁護活動
国選弁護人として受任した事件です。
依頼人は台湾人で,香港経由で日本へ入国した際に持ち込んだスーツケースから税関検査で覚せい剤が発見され,覚せい剤密輸の容疑で逮捕,勾留されました。
依頼人は,スーツケースの中に覚せい剤が入っていることは知らなかったと述べていましたが,覚せい剤密輸の事実で起訴され,裁判となりました。
弁護人は,依頼人の話を基に,覚せい剤密輸の故意がなかったとして,裁判で無罪を主張しました。
主張の大きなポイントとなったのは,依頼人の同行者の行動です。依頼人は,同行者からスーツケースを運ぶよう頼まれていたのですが,その同行者は,依頼人が捕まっていることを知ってすぐに日本を出国していました。同行者がとったこのような行動は不自然であり,依頼人が同行者に騙されていた可能性が払拭できないと考えられました。そこで,弁護人から,この点を裁判でも強く主張しました。
しかし,結果として主張は認められず,依頼人には有罪の判決が下されました。ただし,依頼人は,覚せい剤を密輸しているとの認識が薄かったとして,検察官からの懲役13年の求刑が減軽され,懲役8年の刑が科されることになりました。