近時、たくさんの法廷もののドラマやアニメがありますが、実際の裁判に近い迫真的なものから、実際の裁判とはかけ離れたパロディーものまで、様々なものがあります。
中でも、ゲームやアニメ、実写版の映画にもなった「逆転裁判」シリーズは有名ですね。この「逆転裁判」シリーズでは、主人公が「異議あり!」と叫ぶシーンが有名です。この主人公、相手の検察官はもちろん、証言している証人や、判決をまさに言い渡そうとしている裁判長にまで「異議あり!」と叫んで中断させ、自分の意見をどんどん述べていきます。
さて、実際の法廷ではこのようなことがあるのでしょうか。
残念ながら、実際の法廷で「逆転裁判」のような異議の応酬がなされることはないといっていいでしょう。
実際の法廷では、異議を述べることのできる対象は法律や規則で決まっています。たとえば、証人尋問の最中に禁止される質問を検察官がした時に「異議あり」ということは許されていますが、「逆転裁判」の主人公のように、証人の証言に対して「異議あり、その証言の内容は間違っています!」ということはできません。裁判所の訴訟指揮について異議を述べることは許されていますが、裁判所が判決を言い渡そうとしているときに、「逆転裁判」の主人公のように「異議あり、実はこんな証拠があります!」ということはできません。
法廷でどんな場合に異議を述べることができるのか、どんな内容の異議を述べることができるのかは法律や規則で定められており、その正確な理解が必要不可欠です。正確な理解に基づいて、法廷で即座に異議を述べるべきかを判断し、正しく異議を述べることは高度な技術を要します。実際に不当な尋問が行われ、不当な訴訟指揮が行われたときに、「異議あり」といえるかが訴訟の行方を左右することもあります。
刑事弁護人には、異議の技術が要求されるのです。
東京ディフェンダー法律事務所 山本衛