報道などを見ていると,人を死なせた事件で,重ければ死刑から,場合によって執行猶予まで大きく幅があることが分かると思います。
稀に人を死なせてるんだから全部死刑でよいなどという極端な意見を目にすることがありますが,なぜこのように幅が広いのでしょうか。
それは,刑法が行為責任というものに基づいて刑を定めているからです。
例えば同じ人を死なせた犯罪でも,殺人罪,傷害致死罪,過失致死罪と別々の犯罪が定められています。
殺人罪は,故意に人を死なせる犯罪です。
傷害致死罪は,殺そうとは思っていなかったが,故意に暴行を加えて死なせてしまった場合です。
過失致死罪とは,故意の暴行もなく,誤って死なせてしまった場合です。
これらのどの犯罪が成立するかで刑は大きくことなります。
それは,犯罪を起こし結果を発生させた場合,意図的に結果を発生させたのか,過失なのかで,非難の度合いが異なると考えられるからです。
殺そうと思って殺した人と,誤って死なせてしまった人とでは責任に違いがあるという意味です。
さらに,同じ殺人罪でも,そもそも法定刑が死刑,無期,又は懲役5年以上の有期懲役と定められています。酌量減軽をすれば懲役2年6月まで下がりますし,執行猶予が付される場合もあります。
故意に人を殺害したという場合でも,保険金を得る目的で殺害したような事件から,介護に疲れ将来を悲観してやむなく殺害してしまった事件まで,様々あります。どのような刑がふさわしいかは,どのような動機であったか,犯行態様は悪質であるか,計画的か否かなど,その事件その事件の個別性に着目して判断されることになります。
そのため,同じ罪名でも判決結果は幅広いものとなるのです。
東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也