刑事訴訟法の改正で,2019年6月までに,裁判員裁判対象事件などにおいて,原則として取調べの全過程を録音録画することが義務づけられることになりました。
この法改正は,違法・不当な取調べで虚偽の自白がなされ,無実の人が有罪として処罰されることを防ごうとするものです。
こうした法改正によって違法・不当な取調べがなくなるといえるのでしょうか。
こうした改正法の施行前の段階において,すでに警察官,検察官の取調べにおいて録音録画をする運用が一定事件でなされています。
しかし,取調べで録音録画がなされているにもかかわらず,違法・不当な取調べがなされた事案を経験しています。
ある担当事件では,録音録画がなされていない留置場から取調室までの移動の間,警察官が本人を侮辱し供述を強要したり,別の事件では弁護士は信頼できない人物であるなどと弁護士との信頼関係を破壊しようとしました。
また,録音録画がなされていても本人を怒鳴りつけ供述を強要したりしていました。
いずれの事案でも,弁護人から違法な取調べを即刻中止するよう苦情を申し入れ,また裁判所に対して不服申立を行うなどしました。
これに対して,裁判所は,本人が警察署に拘束されていたのを取り消し,拘置所とする決定をしました。
単に法律で取調べの録音録画が義務づけられた,取調べの録音録画が実施されているというだけでは違法・不当な取調べはなくならず,実際にも違法・不当な取調べを許さないよう弁護活動し,また法律を実質的に運用していくことが重要だと思います。
東京ディフェンダー法律事務所 弁護士 藤原大吾