刑事弁護ブログ

2018.06.13 刑事弁護コラム

その人は本当に専門家ですか

近年では、裁判で専門家の証言が問題になる事件が多くなりました。
法医学者、精神医学者、指紋鑑定人、薬物鑑定人、その他刑事事件で問題になる専門家はたくさんいます。弁護士にも、こうした分野での基本的な知識や専門家とのパイプ、専門家に対する反対尋問技術など、高度な技術が不可欠になってきています。このサイトに掲載されている弁護士は、皆こうした専門的な事項が問題となる困難な事件を歓迎し、積極的に取り組んでいます。
さて、近年話題になっているのは、科学的な鑑定であるといいながら、その実質は全く科学的ではないのではないかと疑いたくなるような証人です。本当に「専門家」ですか?と言いたくなる証人です。
私が経験した事例で印象的だったのは、防犯カメラの画像を分析する専門家と称して出廷した証人のことです。その証人は、防犯カメラの映像と被告人の映像とを見比べ、「一致する確度は○○人に一人」などと判定していましたが、その科学的根拠は全く不明なものでした。結局、この事件は一審で有罪となったものの二審で無罪となりましたし、同じ鑑定人が問題となった事件で高裁でその科学的妥当性が疑問視された例もありました。
このように、自称「専門家」で一件科学的な鑑定を装っていても、その内実は非科学的であるというような事態は一定数あります。きちんとその問題点を分析し、それを法廷できちんと表すことのできる弁護技術が求められます。

東京ディフェンダー法律事務所 弁護士 山本衛