「精神障害のある人が犯罪を犯したからといって無罪になるのは納得できない。」という声を聞きます。特に、人が亡くなるような大きな事件が起きたときにはよく起こる議論です。
精神障害により判断・行動能力を失っている状態で犯行を行った場合,心神喪失状態であるとして刑事責任を問えない可能性があります。
また判断・行動能力が著しく低下している状態で犯行を行った場合,心神耗弱状態であるとして刑が減軽される可能性があります。
被害者の方やご遺族の方の心情からすれば、犯人が病気だからといって無罪になったり刑が軽くなったりするのは納得できなくても自然なことです。
ではなぜ無罪になったり刑が軽くなったりするのでしょうか。
ある精神科医の方が「幼児が人にいたずらをしても本気で刑罰を科そうという人はいないと思う。精神障害の影響下で事件を起こしてしまう方というのはそれと同様の状況といえる。」というような説明のされ方をされていました。
幼児に刑罰を科さないのは、幼児がまだ善悪の区別がつかなかったり、自分の行動をコントロールだけの力がなかったりするからでしょう。
それゆえに非難ができないからです。
精神障害により事件を起こしてしまう方は、病気のために善悪の区別がつかなかったり、行動をコントロールできなかったりするのです。
東京ディフェンダー法律事務所 久保 有希子