赤信号を無視して交通事故を起こし,被害者を死亡させてしまったり,怪我をさせてしまった場合,ほとんどのケースで過失運転致死傷罪が成立することになると考えられます。赤信号を無視した点について,運転者に過失(やるべきことをやらなかったという義務違反)が認められるのが通常と考えられるためです。
ただし,一定の類型の事例では,過失運転致死傷罪よりも重い危険運転致死傷罪が成立することになります。危険運転致死傷罪が成立するのは,運転者が,赤信号を「殊更に無視」したと評価できる場合です。
どのような場合に「殊更に無視」したといえるのかは,難しい問題です。赤信号であるとはっきりと認識して,あえて信号無視をしたような場合がこれに当たるのは当然です。それに加えて,警察官などから逃げるために,赤信号だとはっきりとは分かっていなくても,およそ信号の規制に従う意思なく走行して事故を起こしたような場合にも,「殊更に無視」に該当すると一般的に考えられています。
危険運転致死傷罪が成立すると,過失運転致死傷罪に比べて量刑も重くなるため,「殊更に無視」に当たるかどうかは,実際の刑事裁判でもしばしば問題になっています。
法律事務所シリウス 中井淳一
刑事弁護ブログ
2019.03.27 | 刑事弁護コラム |