刑事弁護ブログ

2019.10.30 刑事弁護コラム

外国人の保釈とパスポート

外国人の方が被告人の場合,保釈を請求するにあたっては,逃亡のおそれがないことを,裁判所にどのように主張するかが重要となります。一部の裁判官は,外国人は一度帰国してしまうと,再び本邦に戻ってこず,裁判に出頭しない危険性が大きいから,日本人と比べても保釈を認めるべきでない場合が多い,と考えています。このような考え方自体が偏見に満ち,不当であることは明らかです。しかし,外国人の方が日本人と比べても保釈が通りにくい場面は,確かに存在します。

逃亡のおそれが乏しい,ということを疎明する最もシンプルな手段は,弁護人がパスポートを預かり,管理することです。弁護人がパスポートを管理していることについての報告書を作成し,保釈請求書に添付する,といった方法が考えられます。
在留カードが交付されていない場合は,旅券の携帯義務があり,弁護人がパスポートを預かることは,この義務に反するおそれがあります。対処方法としては,例えば暗証番号付きの小型金庫にパスポートを入れて保管してもらい,暗証番号については,必要がない時以外には被告人に伝えない,というものがあります。

もっともパスポートを預かるという手段が,唯一の手段ではありません。被告人が国外に逃亡してしまうという可能性が小さいことは,その被告人の国内での生活状況,人間関係,家族関係などからも明らかであることが多いです。まずは被告人の家族や周辺人物から十分に情報収集をしたうえで,パスポートの管理にも目を向けるのが,弁護人として正しいスタンスかと考えます。

東京ディフェンダー法律事務所  赤木竜太郎