社会全体の少子高齢化が進んでいます。
この状況を反映して,刑務所に収容されている人員の高齢化も進んでいます。
また,検挙人員の年齢比をみても,65歳以上の者が検挙された比率は,年々上昇しています。
平成29年の刑法犯の検挙人員をみると,70歳以上が14.7%,65歳~69歳が6.8%となっています。平成10年には,両者を合計しても数パーセントでした。(20歳未満の比率は年々減って,平成10年では40%を超えていましたが,平成29年には,12.7%となっています。)。
70歳以上の方の刑法犯の検挙人員の罪名別比率をみると,万引き(62.6%),万引き以外の窃盗(14.1%),傷害・暴行(10.4%),横領(5.5%)と圧倒的に窃盗が多くなっています。
高齢者の傷害・暴行事件も多いです。
生活に困窮して窃盗事件を犯してしまう場合もありますが,実際は,認知症の症状が進行し,判断能力等が低下した結果,窃盗してしまう人もいます。
高齢者の傷害・暴行事件も,認知症等の病状が悪化し,ストレスがかかった際に不穏となり,暴れてしまうケースも多いです。
高齢者の事件は,単に刑事罰を科せばよいというものではありません。
認知症の方を刑務所に収容しても,刑務作業もできませんし,刑務所は,医療機関と比べて治療環境が整っていませんので,症状も悪化してしまう可能性があります。
犯罪の原因に認知症等の精神障害が影響している場合は,その障害のケアが必要ですので,本人を罰するだけでなく,様々な観点で,事件が起きてしまった事情を考え,高齢者を支えていくことが望ましいと思われます。
法律事務所シリウス 弁護士 菅 野 亮