刑事弁護ブログ

2020.04.15 刑事弁護コラム

無罪になった場合,補償等を求めることはできますか

身体拘束され,その後に裁判で無罪判決が確定した場合,刑事補償法に基づき,刑事補償請求を行うことができます。

 刑事補償法上は,1日あたり1000円~1万2500円以下の割合による額の補償金を交付すると定められています(刑事補償法4条第1項)。通常,1日あたり1万2500円として,支払がなされることが多いです(100日間の身体拘束されていた事件だと125万円が支払われることになります。)。
 なお,刑事補償として,弁護士費用等の費用補償も受けることができますが,裁判所は一般的には国選弁護の基準で費用補償額を算定することが多いため,実費のすべてが補償されるわけではありません。

 虚偽の告訴等が原因で刑事裁判を受けることになった場合,虚偽の告訴等した者に対する損害賠償請求をすることも考えられます。民事上の損害賠償請求を行うためには,その者の故意または過失により権利侵害がなされたことが必要です。

 刑事補償は自動的に行われるわけではなく,裁判所に対して刑事補償請求を行って,裁判所が金額を判断します。刑事補償法上,裁判所は「拘束の種類及びその期間の長短,本人が受けた財産上の損失,得るはずであった利益の喪失,精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察,検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない」とされています。

 裁判所は,上記事情を考慮して,1日あたりの金額を定めることになるため,例えば,1日あたり3000円の補償額と決まる場合もあります(100日間の身体拘束されていた事件だと30万円が支払われることになります。)。

 例えば,精神障害がある被告人の場合,社会内にいたとしても通常の人と同様の収入を得る見込みが少ないなどという理由で一般に認められる刑事補償額よりも低額な金額を算定することがあります(この裁判所の判断傾向は,障がい者を不当に差別するもので全く受け入れることはできませんが,一般的な傾向です。)。
 また,刑事補償法3条第1項が虚偽の自白をした場合には,補償の一部又は全部をしないことができるとしているため,虚偽自白をしたケースでは,刑事補償額を制限されることがあります。しかし,捜査官が不当な誘導等をしたことが原因で虚偽自白したような場合であれば,そのような減額も不当です。

 刑事補償の裁判で決まった金額については,不服申し立てを行うことができます。
 刑事補償請求の手続については,費用の補償も求めることが一般的であることから,刑事事件を担当した弁護士に引き続き担当してもらうことがよいと思います。

法律事務所シリウス 弁護士 菅 野  亮