刑事弁護ブログ

2020.09.09 刑事弁護コラム

証人となることを拒否したり,証言を拒否できますか

検察官や弁護人から,証人になって欲しいと打診があった場合であれば,これに応じるか拒否するかは自由です。
 しかし,裁判所から,証人として召喚された場合,これに応じる義務が生じます。

 裁判所から召喚状が来た場合,正当な理由なく出頭しないと,10万円以下の過料や1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることがあります。また,出頭しないために生じた費用の賠償を命じられることがあります(刑事訴訟法150条,151条)。

 また,裁判所は,証人が,正当な理由なく,召喚に応じないとき(又は応じないおそれがあるとき)は,その証人を拘引することができます(同法152条)。

 証言拒否ができる場合は,刑事訴訟法に定められています。これらの理由がないのに証言を拒否した場合,10万円以下の過料の制裁を受けることがあります(同法160条)。

 何人も,自己が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる(同法146条)。
 何人も,自己の配偶者,三親等内の血族若しくは二親等内の姻族又は自己とこれらの親族関係があった者等が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる(同法147条)。

 もっとも,実際に証言拒否をする場合,裁判長から,「どういう理由で証言拒否をするのですか」等と質問がなされ,具体的な証言拒否事由があるかどうかの確認がされますので,抽象的に,刑事訴追を受けるおそれがある,とだけ述べても,証言拒否は認められません。

 なお,法律上,証言拒否権が認められる場合であっても,検察官は,裁判所に対して,「当該事項についての証言の重要性,関係する犯罪の軽重及び情状その他の事情を考慮し,必要と認めるとき」に,「証人の刑事事件において,これらを証人に不利益な証拠とすることができない」等の条件で,証言させることを請求することができます(「刑事免責」と呼ばれています。同法157条の2)。 
 
 証人となることについて,疑問や不安がある場合,刑事事件に詳しい弁護士に相談することがよいと思います。

法理事務所シリウス 弁護士 菅 野  亮