検察官は,起訴後,検察官が公判で証拠調べ請求する証拠(「検察官請求証拠」といいます。)を整理し,第1回公判よりも前に,弁護人に検察官請求証拠の閲覧・謄写の機会を与えなければなりません。多くの弁護人が,検察官請求証拠を謄写し,証拠を検討しています。
弁護人は,検察官請求証拠を検討し,当該証拠を同意するか,不同意にするか等の検討を行います(弁護人が同意の意見を述べれば書証が法廷で朗読されることになりますし,不同意の意見を述べた場合には,当該書面の作成者などが証人尋問されることになります。)。
弁護人は,検察官請求証拠をの中に,弁護人が把握していなかった事実があれば,依頼者や関係者に事実関係を確認をしたりすることになります。
したがって,弁護人は,公判期日よりもできるだけ早く,検察官請求証拠の開示を受けて,検討したいと考えています。
しかし,検察官請求証拠の開示が遅れることがあります。
そのような場合に,次のような手段がとれます。
① 担当検察官に対して,証拠開示を急ぐよう文書あるいは口頭で伝えます。
② ①をしても,検察官請求証拠の開示がされない時は,検察庁の公判部長に対し,証拠開示を急ぐよう依頼したり,裁判所に対して,このまま証拠の検討が遅れると,公判で証拠意見等が述べられないので,裁判所からも検察官に対して,早期に証拠開示をするよう促して欲しいと伝えます。
③ 検察庁に対して,証拠開示が遅いことで苦情申立てをしたこともありますが,苦情申立てをした直後に証拠は開示され,かつ,検察庁からも,証拠開示が遅れたことについてお詫びがあったこともあります。
検察官は,起訴するまでに証拠の収集及び整理を終えているはずですから,本来,起訴と同時に証拠開示ができるはずです。しかし,残念ながら,そのような実務の運用にはなっていません(千葉でも,第1回公判期日の3週間以上前に検察官請求証拠の開示を行うという取り決めがあるだけです。)。
弁護人は,証拠の開示を受けてから,依頼者や関係者に事実関係を確認したり,弁護人から請求できる証拠の整理をしたりすることになりますが,弁護人の準備時間に十分配慮して,起訴後,できるだけ早期に証拠開示がなされるべきです。
また,弁護人は,検察官請求証拠の開示が遅れた場合には,直ちに検察官に対してそのことを指摘し,第一回公判期日に充実した審理が行えるようしていく必要があります。
法律事務所シリウス 弁護士 菅 野 亮