刑事弁護ブログ

2021.01.19 刑事弁護コラム

呼び出しの拒否と逮捕の可能性

警察はすべての事案について,被疑者を逮捕するわけではありません。相当数の事件が「在宅」つまり,逮捕や勾留をせずに捜査がなされます。取調べの必要が生じた場合は,警察が被疑者に電話などで連絡し、「●月●日に●●警察署に来てほしい」と言って呼び出します。
呼び出しに応じた場合,多くのケースでは警察署で取調べを受けるなどした後,また自宅に帰されます(ただし事件当日に逮捕されていたとしてもおかしくないようなケース,例えば薬物の所持や自己使用といったケースの場合は,任意の出頭を求めてその場で逮捕するということもしばしばあります。)。

在宅事件で警察官からの呼び出しを無視していたり,あるいは呼び出しに全く応じたくないと伝えた場合,リスクはあります。被疑者が出頭要請に応じない場合,捜査機関は逃亡する可能性が高いと主張して逮捕状を請求し,さらに勾留を請求します。そして多くの裁判官が安易に逮捕勾留を認めてしまうのが現状です。
他方で,取調べは公平な聴取の場ではありません。事実に覚えがない事案など,取調べに応じたり供述をすること自体が適切でないケースは沢山あります。

本来,被疑者であっても出頭する義務もありませんし,捜査に協力する義務もありません。出頭しなければ逮捕・勾留されるリスクが高まるとはいえ,必ず取調べに応じて話をしなければならない,ということには全くなりません。
上記のリスクを避けながらも,取調べに応じたくないという場合は,早期に弁護人を選任し,弁護人と共に警察署に出頭するということをおすすめします。弁護人が取調べの場に同席することを求めても,多くの場合拒絶されてしまいますが,取調べ室のすぐ外や警察署内で待機することを拒まれることはほとんどありません。いつでも弁護人の助言を求められる状況下で適切に黙秘権を行使し,また取調べに応じること自体を拒否することが可能です。そして,万が一逮捕,勾留された場合も,弁護人が直ちに不当な拘束から解放する活動に着手することが可能です。