私は日々スポーツにまつわる案件に取り組んでいるのですが、スポーツ業界も刑事事件と無関係ではないと感じます。
たとえば、部活動の体罰です。部活動での体罰が許される余地は、ほとんどありません。現実に、部活動の部員に対する体罰が暴行事件や傷害事件として検挙される事例はあります。ニュースになったものもありましたね。
さて、本人が認めている場合に暴行や傷害事件に当たること自体は特に解釈上問題がありませんが、依頼人が「そんな暴行はしていない」と主張する場合は、一段と事件としての難易度が増します。
おそらく「被害者」とされる生徒は「暴力を受けた」と主張するのだと思いますが、そこには嘘をつく動機がある場合も多くあります。たとえば指導が厳しい、自分が選手選考に外れた、そういった動機でありもしない事実を申告する、ということはあり得ます。他方、厳しい指導をする指導者の多くが、カリスマ性があったり、競技の腕が優れていたりするので、指導者側を支持する生徒や保護者が、指導者をかばうこともあります。こうして、暴行の有無という単純な争点が、部活動の体質の争いのような様相を呈することがあります。
このような事件を刑事事件としてみた場合、弁護人としては複雑な動機や人間関係、全体の対立構造を理解したうえで証人尋問に臨まなければならず、弁護人の高い能力が要求される事件になることも多い類型です。
弁護士山本衛
刑事弁護ブログ
2021.09.07 | 刑事弁護コラム |