法律上、すべての犯罪が裁判員裁判で審理されるわけではありません。裁判員裁判は、一定の重罪に関して行われるものとして、法律で要件が決まっています。具体的には、
①法定刑に死刑または無期懲役がある事件
②故意の犯罪行為で人を死亡させた事件
です。
①は、たとえば殺人とか、強盗致傷とか、そういう事件が典型的です。②は、傷害致死や保護責任者遺棄致死などの罪名がこれにあたります。死刑または無期懲役ではないけれど、重大な結果が生じているということで裁判員裁判になります。
裁判員裁判では、その人が罪を犯したのか否か、犯したとして適切な刑罰は何か、について判断することになります。もちろん一定のルールはありますが、裁判員裁判は健全な社会常識を裁判に反映させることが目的ですから、刑罰を決めるときにも裁判員の常識が加味されます。
ただ、中には、覚せい剤の密輸など、全くふつうの常識からは罪の重さが想像もつかない事件も対象になっています。覚せい剤の密輸などでは、裁判官裁判時代の裁判と裁判員裁判とで、ほとんど刑の重さが変わっていないというデータもあります。
裁判員裁判が始まってしばらくたちますが、そろそろ、裁判員裁判の範囲も、見直すことを検討してもよいかもしれませんね。
弁護士山本衛
刑事弁護ブログ
2021.11.09 | 刑事弁護コラム |