刑事弁護ブログ

2021.11.16 刑事弁護コラム

日本弁護士連合会・刑事弁護センターの仕事

日本弁護士連合会(日弁連といいます。)には,刑事弁護センター(刑弁センターといいます。)という組織が設置されています。
 刑弁センターのメンバーは,各都道府県ごとにある弁護士会で刑事弁護を熱心に担当している弁護士と日弁連会長が指名した弁護士によって構成されています。
 私も,日弁連の刑弁センターの委員であり,2019年6月から,事務局長をしています。

 刑弁センターでは,刑事司法,刑事裁判そして刑事弁護の在り方等について検討するために,会議を開催して議論したり,メーリングリスト等で意見交換して,その議論を全国の弁護士に伝える活動等をしています。また,あるべき司法制度の実現のために立法提言などもしています。

 日弁連刑弁センターは,様々な課題に取り組んで来ました。
 例えば,日本には,被疑者段階の国選弁護制度がありませんでした。したがって,弁護士費用を自らの費用で選任できない場合,逮捕・勾留されて起訴されるまでの最大23日間,弁護人の助言を受けることなく,捜査官と対峙しなければなりませんでした(再逮捕されるような事件であれば,数ヶ月,弁護人の助言なく,身体拘束が続くことが常態化していました。)。
 刑弁センターでは,被疑者段階における国選弁護制度を実現するべきだと考え,一部の地域で行われていた当番弁護士制度を全国で行われるための支援をしたり,被疑者段階の国選弁護制度ができた場合にも対応できる体制整備等を行ってきました。
 
 そのような活動の成果もあり,まず,重大事件に限って被疑者国選制度が法制化され,平成28年改正刑事訴訟法の施行により,被疑者が勾留された全ての事件で被疑者国選制度が実現することになりました。

 今後は,逮捕段階からの国選弁護制度(逮捕されてから勾留されるまでの間は,被疑者国選制度がありません。)や在宅被疑者に関する国選弁護制度なども実現したいと考え,その制度の在り方や対応体制を議論しています。

 ほとんどの人は,逮捕された経験などありません。
 逮捕され,身体拘束されれば,どうしていいか分からず,不安になります。
 そのようなタイミングで弁護人の助言を受けることのできる制度の実現を日弁連刑弁センターでは目指しています。

 刑弁センターでは,あるべき制度の検討だけでなく,弁護士向けの研修を企画したり,出版活動などもしていますし,必要に応じて,最高裁・法務省等などの関係機関との協議もしています。今後とも,よりよい刑事司法の実現を目指していきたいです。
 刑弁センターの活動について興味ある方は,拙稿「日弁連刑事弁護センターの活動内容及び取組み」季刊刑事弁護104号・202頁(現代人文社・2020)もご覧下さい。

法律事務所シリウス 弁護士 菅 野  亮