2020年6月から,法制審議会(逃亡防止部会)で,保釈中に逃亡することを防止するための方策が議論されています。その中の1つのテーマが,GPSによる電子監視です。具体的には,GPSの端末を保釈中の被告人に付けて,位置情報等を取得することで,逃亡防止を図る制度をつくるかどうか議論されています。
なお,現状でも,例えば,弁護人が,依頼者が保釈された場合には,GPS端末を付けて,位置情報を弁護人が把握し,裁判所にそれを報告するので,保釈を許可して欲しいと主張することはできます。しかし,そういった試みにより保釈が許可された実例は報告されていません。
諸外国では,保釈する場合,GPSによる電子監視している国もあります。
例えば,アメリカでは,GPSの端末を足首に付けて,位置情報を把握できる仕組みがあります。なお,常時位置情報を把握するのではなく,決められた時間に,決められた場所(例えば自宅)にいるかどうかを把握するような条件で行われることもあり,バリエーションがあります(そもそも,電子監視も保釈保証金もなく,保釈されている事例も多いようです。)。
アメリカ以外でも,イギリス(イングランド及びウェールズ)でも,保釈許可時に,電子監視の条件を付すことができる法制度になっています。細かい条件は国によって様々ですが,フランスや大韓民国でも,保釈の条件として電子監視の装着を命じることができるようです。もちろん,各国とも,GPSによる電子監視をすることは,保釈中の被告人のプライバシーと関係しますので,必要最小限度の監視になるように工夫をしています。
日本の保釈実務では,これまではGPSによる電子監視の制度はありませんでしたが,統計的にもほとんどの被告人が逃亡せずに出頭しています。電子監視がプライバシー侵害であることを考えれば,現在,保釈が許可されている被告人に安易にGPSをつけるようなことは賛成できません。他方,これまで,なかなか保釈が許可されなかった被告人に対して電子監視を条件に保釈が許可されるのであれば,電子監視が条件であるとはいえ,警察署や拘置所で身体拘束されるよりも自由であり,裁判の準備も容易になりますので,そのような制度について検討する余地はあるように思われます。
法律事務所シリウス 弁護士 菅 野 亮