令和3年9月、10月にかけて、法制審議会刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会が開かれ、侮辱罪(刑法231条)の法定刑引き上げについての議論が行われました。
侮辱罪の要件自体が変わるわけではなく、法定刑が引き上げられる「だけ」であり、大きな影響はないのではないかと思われている方もいるでしょう。
○現行法
刑法231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱したものは、拘留又は科料に処する。
○諮問の骨子(諮問第118号)
侮辱の罪(刑法231条)の法定刑を1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とすること。
侮辱罪の法定刑が上がると、たとえば、以下のような変化があります。
決して、法定刑が上がる「だけ」というものではありません。
〇教唆犯及び従犯の処罰
拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない(刑法64条)、とされています。
法定刑の引き上げにより、教唆犯及び従犯が処罰できることになります。
〇逮捕及び勾留の要件緩和
30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限り、逮捕することができる(刑訴法199条1項ただし書)とされています。
また、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まった住居を有しない場合に限り、勾留することができる(刑訴法60条3項)ものとされています。
法定刑が引き上げられることにより、容易に逮捕、勾留できることとなります。
東京ディフェンダー法律事務所
弁護士 久保 有希子