裁判員裁判では、被告人に対する刑を決めるにあたって、「量刑検索システム」という裁判所が作成したデータベースを活用します。このデータベースでは、過去に同種の事例についてくだされた刑の重さを棒グラフ(ヒストグラム)の形にして表示することができます。これを一般的に「量刑グラフ」と言います。弁護人の弁論では、この量刑グラフを裁判官や裁判員に示しながら、全体の量刑傾向を分析した結果を説明し、また、本件が全体の量刑傾向の中でどのあたりに属するかを説明することがあります。
この量刑グラフを出力する際には、様々な条件を入力します。罪名だけでなく「動機」や「被害金額」「犯行態様」など、様々な検索条件に因子を入力し、対象を絞り込んでいきます。その絞り込み方によって、出力される件数や表示されるグラフも大きく変わります。
このようなグラフの選定の方法に、絶対的な正解はありません。絞り込みすぎると、件数が少なくなりすぎて、量刑傾向を読み取ることが困難になります。また、グラフが裁判員の印象に与える影響は大きいことから、どのような形状のグラフを見せた方が説得にあたって効果的かについても、検討を尽くさなければなりません。
裁判員裁判に熟練した弁護人は、このような様々な要素を考慮しながら、量刑グラフの選定に時間をかけ、少しでも有利で適切な量刑判断がなされるように、弁論の内容を練るのです。
東京ディフェンダー法律事務所 赤木竜太郎