刑事弁護ブログ

2023.01.09 刑事弁護コラム

公判前整理手続で十分な証拠が開示されるための弁護活動

警察,検察が捜査で収集した証拠について,弁護人としては,十分な証拠開示を受け内容を把握できて初めて,証拠の点で検察官と対等に近づけるものといえます。
しかし,検察官から弁護人に証拠開示が自動的になされるものではありません。
弁護人が検察官から証拠開示を受けることについて,刑事訴訟法上,公判前整理手続で証拠開示請求権が認められています。
弁護人の活動として,十分な証拠開示を受けるためには,証拠開示についての条文や判例を理解して適切に請求する必要があります。
そして,警察や検察がどのような捜査をし,どのような証拠を集めているかを推測する必要があります。

例えば,被疑者,被害者や目撃者とされる者に対する取調べとして,警察・検察は供述調書を作成するだけではありません。
手書きで供述内容を書かせたり,状況などを図で書かせたりすることが考えられます。
こうした書面についても供述書として,類型証拠開示請求の対象となる「供述録取書等」(刑事訴訟法316条の15第1項5号,7号)に該当すると考えられます。

また取調べを行うだけでなく,供述する被害状況や目撃状況などについて,警察官が被疑者・被害者・目撃者などの役になって再現を行いその状況を写真で撮影するといった捜査が考えられます。
こうした捜査で作成された書面は,実質的に検証の結果を記載した書面に準ずる書面(刑事訴訟法316条の15第1項3号,321条3項)に該当すると考えられます。

検察官が請求する鑑定などの鑑定書は,鑑定の結果が記載されているに留まり判断の元となったデータや経過の記録などについては内容となっていないことが多いといえます。
そして,こうした判断の元となったデータや経過の記録などについては,警察・検察は鑑定を行った科捜研から取り寄せたりしておらず,証拠一覧表にも記載されていないことが通常といえます。
しかし,証拠開示請求の対象となる証拠は,判例において,「検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含む」(最決平成19年12月25日決定)と解されています。
このため,検察官に対しては,鑑定の判断の元となったデータや経過の記録などについても,鑑定先から入手して開示をするよう求めることが重要といえます。

目撃者などについて供述調書が作成されていない者についても,警察官が調書を行って聴取結果報告書等が作成していることが考えられます。
しかし,こうした聴取結果報告書等については,類型証拠開示請求の対象となる「供述録取書等」(刑事訴訟法316条の15第1項6号)に該当するかどうかは争いがあります。
刑事訴訟法上,このような類型証拠開示請求だけではなく,主張関連証拠開示請求も規定しています。
類型証拠開示請求で証拠開示がなされないとしても,さらに主張関連証拠開示請求を行い証拠開示がなされるよう活動すべきです。

東京ディフェンダー法律事務所 弁護士 藤原大吾