2021年、法制審議会・刑事法(犯罪被害者氏名等の情報保護関係)部会が開かれ、被害者等の氏名秘匿に関する議論が行われました。
https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003009
「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(平成 28 年法律第 54 号)により、証人等の氏名等の開示制限(刑事訴訟法第 299 条の 4)、公開法廷での証人等の氏名等の秘匿措置(同第 299 条の 5、同 299 条の 6)を内容とする改正がなされました。今回の要綱案は、被害
者等の情報の秘匿の範囲をさらに拡大するものでした。
今回、最終的に可決された要綱案は、逮捕から判決まで刑事手続き全体を通じ、被害者や第三者の氏名、住所その他の個人を特定する事項を秘匿できるものとするものです。その秘匿対象は被告人だけでなく、弁護人も対象となっています。
もちろん、被害者等のプライバシー保護の観点から、秘匿するべき場合はありますが、もっと議論が尽くされるべきだったのではないでしょうか。
そもそも、法 299 条の 4 等の検証もなされておらず立法事実が明確ではありませんし、利益相反の確認ができず捜査段階での始動が遅れる場面が想定されますが、そのあたりは運用にゆだねることが前提となっており、弁護活動に支障が生じることが見込まれます。
安易に秘匿決定をする運用が定着することのないよう、弁護人としては、秘匿決定を漫然と受け入れないようにしなければならないでしょう。
東京ディフェンダー法律事務所
弁護士 久保 有希子