刑事弁護ブログ

2023.07.03 刑事弁護コラム

「取調べに関する問題事例」

2016年に改正された刑事訴訟法(以下「改正刑訴法」という。)の施行3年後の見直しについて協議するため、法務大臣が設置した「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」が、令和4年7月から開催されています(令和5年4月26日第6回会議開催。)。

改正刑訴法の見直しの中でも、特に、取調べの録音録画制度については、その実施範囲(録音録画を義務化する事件の範囲)を拡大すべきではないかという議論が、協議会の開催前から繰り返し行われています。

この点に関して、本協議会の第4回会議(令和4年12月23日開催)の資料として、協議会の構成員である河津博史弁護士から、日弁連で集約・作成した「取調べに関する問題事例一覧」が提出されています。

この資料をみると、録音・録画が実施されている場合ですら、取調官が、自白強要や黙秘権の侵害等にあたる不当な言動を繰り返す事例が決して少なくないことがわかります。このことは、録音・録画が実施されていない「密室」で取調べを行う場合には、このような不当な取調べが日常的に行われていることを推測させる事実です。実際、問題事例の中には、被疑者・被告人が違法・不当な取調べを受けた旨を訴えていることから、担当弁護人が取調官に対する調査を行うよう求めたにも関わらず、録音・録画が実施されていないことから、きちんとした検証がなされていないケースも多くみられます。

改正刑訴法によって、特定の事件類型では取調べの録音・録画が義務化されたことにより、全国の各刑事施設には、録画・録画を実施するための機材やノウハウが十分に整備されています。今回の3年後見直しに際して、録音・録画の義務化の対象を、全ての事件にまで拡大することが求められています。

法律事務所シリウス

弁護士 虫本良和