令和5年5月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律により、保釈に関する新たな制度が創設されました。
改正されたポイントは多岐にわたりますが、ここでは、保釈等をされている被告人の「控訴審の判決宣告期日への被告人の出頭義務」について説明をします。
新法では、「控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であって、保釈等をされているものについては、判決を宣告する公判期日への出頭を命じなければならない」とする定めが規定されています。
第1審と異なり、被告人は、控訴審の裁判への出頭義務はありません。
そこで、様々な事情により、被告人が控訴審の期日に出頭しないことがありました。
新法では、控訴審において保釈中の被告人について、判決を宣告する公判期日への出頭を命じることになりますので、被告人がこの命令を受けた場合、控訴審の判決期日に出頭しなければならないこととなります。そして、控訴審において実刑判決が宣告される場合、保釈の効力が失われますので、判決の言渡後、直ちに収監される可能性があります。
もっとも、被告人が「重い疾病又は傷害その他やむを得ない事由」により出頭が困難であると認められる場合には、この限りではないとされています。
弁護人としては、控訴審で保釈中の被告人が、病気等の理由で、出頭が困難である場合、裁判所にその事情を説明し、判決宣告期日への出頭義務付けをしないよう求めることになります。
なお、新法では、上記と関連して、控訴審の裁判所は、出頭義務のある保釈中の被告人が公判期日に出頭しないとき等においては、無罪等の言渡しをした原判決に対する控訴を棄却する判決等以外の判決を宣告することができないものとしています。
この点に関する改正の施行時期ですが、公布日(令和5年5月17日)から6ヶ月以内に施行されることになります。
法律事務所シリウス
弁護士 菅 野 亮