刑事弁護ブログ

2024.08.06 刑事弁護コラム

勾留理由開示期日の活用

刑訴法上、勾留理由開示(刑訴法82条以下)という制度があります。

勾留理由開示制度の趣旨については、勾留理由の公開を要求するに留まるという立場と、不当勾留からの救済を目的とするという立場に大きく分かれていますが、裁判実務では前者が採用されており、実際の勾留理由開示期日でも、罪証隠滅や逃亡の具体的可能性について実質的な理由が開示されることがないのが現状です。

先日、裁判所から「捜査の密行性確保のために抽象的な回答に留めます」といった回答をされることがあったため、起訴後で証拠開示もされているので、当該理由は該当しませんと記載した勾留理由の求釈明書を提出したところ、刑訴法上の勾留理由開示の趣旨からすれば、これ以上の回答の必要性はありません、との回答が返ってきました。

一方で、勾留理由開示の最大のメリットは、「裁面調書の作成」だと考えています。

保釈請求却下や接見等禁止解除の職権発動がなされない理由として、捜査段階で黙秘していた経緯や、認否が明らかになっておらず罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由が認められる、と言われることが多いのが実情です。

証拠開示を待っていて証拠意見を言えないケース、第一回公判期日まで時間があるケースなども存在します。こういった事案で、弁護人作成の請求書で認否のみを明らかにしても、身柄が通らないケースも中には存在します。

勾留理由開示期日では、被疑者・被告人の意見陳述(問答形式も可)の機会があります。

この機会に発言した内容は、全て裁面調書となり、弁護人作成の書面等に比べて証拠能力的にも盤石な書面の獲得ができるといえます。

意見陳述の内容に制限はないので、被疑事実や公訴事実の認否のみの陳述も可能ですし、場合によっては問答形式で被告人の供述を顕出することも可能です。

先日担当した事件で、公訴事実が重たい事案で接見等一部解除すら全く通らない事案がありましたが、勾留理由開示で公訴事実の認否を明らかにしたところ、両親との接見等禁止が解除されました。

弁護戦略の一つとして、勾留理由開示の活用を検討してみてください。

東京ディフェンダー法律事務所 開原早紀