裁判の公開は、憲法上認められている原則であり(憲法82条)、刑事裁判においては被告人が公開裁判を受ける権利が保障されています(憲法37条1項)。
そのため、刑事裁判は、原則として誰でも傍聴が可能となっています。著名事件などでは傍聴券が配られて、傍聴を希望しても抽選になってしまうことがありますが、刑事裁判自体が広く公開されることに違いはありません。
ただし、法律上、刑事裁判の傍聴が許されない立場となる人が存在します。それは、その裁判において証人となることが予定されている人物で、刑事訴訟規則123条2項で、「後に尋問すべき証人が在廷するときは、退廷を命じなければならない」と定められています。これは、証人予定者が、自身の証言の前に裁判を傍聴することで、事件に関する予断を持ってしまうことを防ぐための規定と考えられます。
もっとも、裁判例上、この規定は訓示規定であると理解されており、実際の裁判でも、例えば家族などの情状証人については、証言の前から裁判を傍聴することが許されているケースが通常であると考えられます。
法律事務所シリウス 弁護士 中井淳一