刑事弁護ブログ

2025.02.17 刑事弁護コラム

控訴審における出頭

刑事控訴審においては、被告人の出頭は義務ではありませんでした。
我が国控訴審は、地方裁判所で行われた第1審判決の当否が審査されますが、一からやり直すのではなく、第1審で取調べられた証拠や交わされた主張等について高等裁判所は引き継いで検討します。
従って、控訴審では被告人の出頭は義務とはされていませんでした(もちろん出頭を希望すれば期日に立ち会うことができます)。
控訴審の判決期日も、これまでは出頭義務はなかったため、例えば保釈中の被告人に控訴審で実刑判決が下された場合でも、出頭しなかった被告人との均衡を図る上で、その場では拘束されず、後日出頭するよう命じられるという運用でした(地域により若干の差はあります)。

しかし、刑事訴訟法が改正され、控訴審の判決期日には保釈中の被告人は出頭しなければならないと規定されました。
保釈されていて判決に出頭しなければ、保釈の取消事由に該当し、拘束されると共に、保釈金も没収されることになります。
(参照条文)
第390条
控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。ただし、裁判所は、50万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、5万円)以下の罰金又は科料に当たる事件以外の事件について、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、被告人の出頭を命ずることができる。
第390条の2
前条の規定にかかわらず、控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であつて、保釈又は勾留の執行停止をされているものについては、判決を宣告する公判期日への出頭を命じなければならない。ただし、重い疾病又は傷害その他やむを得ない事由により被告人が当該公判期日に出頭することが困難であると認めるときは、この限りでない。
第402条の2
控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であつて、保釈又は勾留の執行停止をされているものが判決を宣告する公判期日に出頭しないときは、次に掲げる判決以外の判決を宣告することができない。ただし、第三百九十条の二ただし書に規定する場合であつて、刑の執行のためその者を収容するのに困難を生ずるおそれがないと認めるときは、この限りでない。
① 無罪、免訴、刑の免除、公訴棄却又は管轄違いの言渡しをした原判決に対する控訴を棄却する判決
② 事件を原裁判所に差し戻し、又は管轄裁判所に移送する判決
③ 無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の言渡しをする判決

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也