刑事弁護ブログ

2025.04.07

刑事事件における上訴審の審理方法

よく知られているように、日本では「三審制」というシステムが採用されています。
三審制は、要するに、第一審の裁判があり、これに不服がある当事者は控訴をすることができ、さらに不服がある当事者は上告することができる、という制度です。多くの事件では、第一審は地方裁判所または簡易裁判所が担当し、控訴審は高等裁判所が、上告審は最高裁判所が担当します。

刑事事件でも三審制が採用されています。
ところが、この3回の裁判は、やり方がまるで違います。
第一審は、当事者がお互いに主張立証を行い、証人尋問がたくさん行われます。被告人本人にも話をする機会が必ずといっていいほど設けられ、疑われた事実について十分に弁明をし、反証をする機会があります。
一方で、控訴審ではかなりこれが制限されます。刑事の控訴審は、第一審の判断が正しいかどうかを後から振り返って判断するものとされています。つまり、基本的には新しい証拠をたくさん取り調べたりと言うことは想定されておらず、第一審の手続や証拠を元にして判断がされます。当事者には、一応、新しい証拠を提出する機会が与えられますが、それを採用するかは、原則として裁判所の裁量によります。多くの証拠が「新しく採用する必要がない」との理由で、却下されてしまうのが実情です。他方で、裁判所が必要だと思えば証人尋問などを行うこともできます。このように、控訴審は裁判所の裁量が大きい手続になっています。
上告審になるとさらにできることは少なくなります。上告審では、基本的に当事者に証拠提出の機会は与えられません。上告審で主張できることも限られるというルールになっており、ごくわずかの例外を除いて、原則としてこれまでの記録からの主張を行わなければなりません。実務上、法廷も原則として開かれず、多くの事件が、書面審理のみによって棄却されているという統計となっています。

このように、三審制のもとでは上の審級に行けば行くほどできることが少なくなってきます。第一審で十分に防御を尽くすことが大切であるともいえるでしょう。

法律事務所創衛 弁護士山本衛