事案の紹介
その場に居ただけであるにもかかわらず,共犯者らと被害者らに暴行し怪我をさせたと疑われた事案において,家庭裁判所は重要な証人を呼ばないまま傷害の非行事実を認定し,少年院送致としたところ,高等裁判所が家庭裁判所の決定を破棄し,差し戻した事案。
弁護活動
少年である依頼人は,共犯者らとともに被害者2名に暴行し,けがをさせたとの疑いをかけられていました。依頼人は,現場にはいましたが,暴行に加わったことも,被害者に怪我をさせたこともありませんでした。
家庭裁判所での少年審判では,被害者2名の証人尋問が行われました。少年事件では,裁判所は関係者の調書など,すべての証拠書類を読んでから審判を行います。その証拠書類の中には目撃者の調書が含まれており,依頼人が犯人だと主張する内容でした。その目撃者を直接審判廷に証人として呼び,尋問の機会が与えられるべきだと主張しましたが,家庭裁判所はそれを許さず,被害者2名の証言,目撃者の供述調書の内容をもとに,依頼人が犯人だと認定しました。依頼人は少年院に送致されたため,その決定に対して抗告しました。
高等裁判所で行われた抗告審では,少年審判での被害者2名の証言は信用できないとされ,さらに目撃者とされる人物の証人尋問を行わないまま非行事実を認定した手続は違法であると判断されました。
少年院送致決定は破棄され,差戻となりました。