弁護事件例

2022.10.03 【薬物事件】大麻取締法違反

警察官が路上で被告人の下着の中を目視確認した行為が違法な捜査であったと認定された事例。

否認

事案の紹介

被告人が大麻を所持していたとの大麻取締法違反の事例。被告人は路上で警察官から職務質問を受けた際、パンツ内への大麻の隠匿を疑った警察官から、パンツの中を見せるように繰り返し言われ、路上で性器を半ば露出させてパンツの中を警察官に見せた。その際に大麻は発見されなかったが、その後に警察署に任意同行となった際、身体の別の場所から大麻が発見された。パンツの中を見た行為には重大な違法があり、そのような捜査と一連一体の捜査により押収された大麻は、違法収集証拠として排除されるべきであるから、無罪であると主張した。

弁護活動

パンツの中を見た際の態様について、警察官と被告人の言い分が食い違っており、パンツの中を見た警察官や現場に臨場した別の警察官等の証人尋問を行いました。パンツの中を見た警察官の言い分を排斥するために、当時被告人が着用していたズボンを証拠請求するとともに被告人立ち会いの下での再現実験を行い、警察官がいうような態様でパンツの中を見ることが困難であることを明らかにしました。また徹底した証拠開示請求により、事件当時に撮影された写真データを入手し、パンツの中を見られた当時の交通量が多く、被告人の羞恥心等もそれだけ大きかったことを明らかにしました。
 裁判所は、捜査態様について警察官の証言には曖昧な部分があるとした上で、被告人の供述したとおりの態様であったとし、パンツを下ろさせて性器を半ば露出させた行為は被告人のプライバシーや羞恥心に対する配慮を著しく欠いたものであるとして、違法であると認定しました。もっともこの行為のみの違法性は重大とまではいえず、任意同行後の捜査には違法がなかったとして、大麻の証拠能力は認めました。