事案の紹介
依頼者は被害者とされる人物から、1億円以上を、不動産購入代金の名目でだまし取ったとして詐欺罪で起訴された。
弁護活動
依頼者は被害者らから、スーツケースに入った1億円を受取り、だましとったとされていました。被害者は、依頼者から不動産の購入をもちかけられ、その代金としてスーツケース入りの現金を持参したところ、実際には不動産購入の話は嘘であった、と述べていました。他方で依頼者は、そもそも不動産購入の話などは持ちかけたことはなく、依頼者との取引は人民元と日本円の交換契約であったところ、現金を受け取った後、人民元を振り込むはずが、トラブルにより振り込めなかったに過ぎないと主張していました。
被害者らが嘘をついていることを示すため、被害者らの反対尋問を行いました。また、依頼者のパソコンから、人民元と日本円の交換取引の存在をうかがわせるメッセージのやり取りが発見されたことから、それも証拠として提出しました。
検察官は、被害者らの証人尋問を含む証拠調べが終わった後、論告弁論の直前に、依頼者には横領罪が成立するとの新たな主張をして訴因変更を請求しました。しかしこの請求は裁判所に却下されました。
裁判所は、被害者らの証言は信用できないとして、詐欺罪の成立を認めず、無罪を宣告しました。