事案の紹介
ある施設内で,一人の職員が,知的障がい等を有する入所者に対して暴行を振るい,その後に入所者が死亡してしまったという事実経過について,職員の暴行と入所者の死亡結果との因果関係等を争ったが,その主張が認められなかった事案
弁護活動
国選事件として受任しました。
事件の起きた現場は,知的障がい者等が入所する施設でした。
依頼人は,その施設の職員でしたが,入所者の一人に対して腹部を蹴る等の暴力を振るってしまいました。その後,入所者の具合が悪くなり,病院に救急搬送されましたが,結果として亡くなってしまいました。
依頼人は,入所者に対して暴力を振るったことは認めており,自分の行為を深く悔いていました。しかし,一方で,その施設では,依頼人だけでなく,他の職員達も日常的に暴力を振るっていました。事件の前後にも,依頼人以外の職員が,亡くなった入所者に暴力を振るっていた可能性があったため,依頼人の暴行が入所者の死因となったのか判然としない部分がありました。
そこで,弁護人から,依頼人の暴行と入所者の死亡結果の間の因果関係を争う主張をしました。具体的には,早朝,他の職員がいない状況で,ある職員が入所者に振るった暴行に焦点を当て,依頼人の暴行が入所者の死亡の原因ではない可能性を示そうとしました。
しかし,判決では,弁護人の主張は認められず,依頼人に対しては,傷害致死罪として懲役6年の刑が科されました。