弁護士虫本良和
■略歴
2000年 3月 早稲田大学法学部 中退
2006年 11月 司法試験合格
2007年 4月 司法修習開始(第61司法修習生)
2008年 9月 弁護士登録(桜丘法律事務所 入所)
2010年 1月 法テラス千葉法律事務所にてスタッフ弁護士として勤務
~2015年12月
2016年 1月 法律事務所シリウス 入所
■インタビュー
これまでどんな事件を多く担当してきたのでしょうか?
最も多く依頼を受けているのは刑事事件です。
事件の種類(罪名)は様々で、万引きなどの窃盗事件、喧嘩が高じた傷害事件、痴漢行為や女性への暴行を疑われた性犯罪事件等々、どんな刑事事件でも担当します。また、殺人、強盗致傷、傷害致死、覚せい剤の密輸事件など、裁判員裁判で審理される重大事件についても積極的に担当しています。
私が勤務している千葉県は、全国的にみても突出して裁判員裁判の対象になる重大事件が多い地域です。私が、2015年末まで勤務していた法テラス千葉法律事務所は、裁判員制度がスタートした年である2009年の9月に設立されました。その頃、千葉を含め全国的にみて、裁判員裁判に対応できる知識と能力を持った弁護士はそれほど多くいませんでした。法テラス千葉は、地域の刑事弁護の担い手としての活躍が期待されていました。私は、法テラス千葉で6年間勤務し、その間だけで、20件以上の裁判員裁判の法廷を経験しました。
裁判員裁判で上手く弁護活動をするにはどうすればいいのですか?
実際の裁判員裁判を担当するのがベストですが、実演型の研修もとても有益です。
日弁連でも、私が所属する千葉県の弁護士会でも、実際の法廷を使用した実演型の研修が多く行われています。そこでは、弁護士が実際の裁判と同様に尋問や最終弁論を行い、直後に講師がそれをクリティークするということを繰り返し行います。私は、新人の頃から何度もその研修を受講し、その経験は実際の裁判でも活きていると強く感じます。数年前からは、日弁連が全国に派遣する講師の一員となり、多くの地域で研修の講師を務めています。
また、裁判員裁判が始まったことで、日本の刑事裁判は本当に大きな変化を遂げ、その変化は今も続いています。ですから、私たち弁護士は、専門家として、文献や最新の判例などを調べ、知識をブラッシュアップすることもとても重要です。私自身も、裁判員裁判が本格的に開始したことに合せて初版を大幅に改定して出版した『刑事弁護ビギナーズver.2』(現代人文社)の執筆を担当しました。
刑事弁護のやり方は誰かに教えてもらうのですか?
実際の事件を、ひとつひとつ全力で取り組むこと、そしてそれを継続することこそが、刑事弁護人の能力を高める最も大切なことだと考えています。
もちろん、弁護士になる前には司法修習生として研修を受ける期間があります。しかし、どんな専門職でも同じだと思いますが、講義を聴いたり、書面を書く練習をしただけで、実際の現場で通用する実力が誰でも手に入るということはありません。特に刑事弁護人の仕事は、ひとつひとつの事件、ひとりひとりの依頼者に応じて、「その瞬間に最も必要なことは何か」を見極める能力が不可欠です。そのような能力は、やはり実際の事件そして目の前にいる生身の依頼者に向き合う経験を経なければ、身に付くことはないと考えます。
一方で、それは誰からの教えも受けなくて良いということとは全く違います。むしろ、本当に優れた先輩弁護士から学ぶことは本当に多く、そういう優れた弁護士との「繋がり」は、刑事弁護人にとってとても貴重なものです。
私自身、初めて弁護士として勤務した渋谷の桜丘法律事務所に在籍していた頃、日本屈指の刑事弁護人である神山啓史弁護士から教わって学んだことがたくさんあります。それは今も自分が刑事弁護活動を行うときの大きな指針となっています。
弁護士の仕事は大変ですか?
大変です。でも、ずっと続けていきます。
私は大学を半年ほどで中退して、20代半ばまでずっとアルバイト生活でした。その頃は自分が弁護士になることなど想像もしませんでした。ただ、自分は「強い人」や「成功した人」の仲間になるより、「弱い立場にある人」や「うまくいかなかった人」の味方になる方が性に合っているという感覚があり、漠然とそういう価値観に合った生き方を模索して、弁護士という職業を選びました。
弁護士の仕事、特に刑事弁護人の職務は、私自身の人生にもなかなか「うまくいかない」期間があったからこそ、心の底からやりがいを感じ、常に真剣に取り組むことができているのだと自分は感じています。
ですので、今のところ、辞めたいと思ったことはないんです。