裁判員裁判の特徴

「裁判員裁判とは?」

裁判官3名と,一般市民から選ばれた裁判員6名が審理を行う裁判です。すべての刑事裁判ではなく,一定の重大事件に限って行われます。代表的なものでは,強盗致傷罪,傷害致死罪,殺人罪などです。

point.1

裁判員裁判の流れ

公判前整理手続
(争点・証拠を整理する手続)

  • 通常の事件では4か月~半年程度
  • 複雑な事件ではそれ以上かかる場合あり

公判

  • 多くは1週間以内
    (1ヶ月以上かかる事件もあります)

判決

裁判員候補者の呼び出し
(選任手続の6週間以上前)

裁判員の選任手続
(公判数日前~当日)

point.2

裁判員裁判の特徴

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裁判の準備から闘いが始まる

通常の裁判は,起訴されるとその約1ヶ月後に第1回目の裁判が開かれ,継続する場合は、その後も,おおむね1か月に1回ほどのペースで審理が進んでいきます。

裁判員裁判は,裁判が始まるまでに,裁判の準備をする手続があります。これを,「公判前整理手続」といいます。早ければ数か月,複雑な事件では1年以上,この手続を行ったうえ,ひとたび裁判が開かれれば,裁判は数日~数週間程度で終了する流れとなります。

公判前整理手続では,裁判官・検察官・弁護人・被告人が集まり,裁判の準備をします。裁判でどういう主張をするのかを整理したり,どういう証拠を提出するのかを整理したりします。この裁判の準備の段階から,すでに闘いは始まっています。弁護人には,公判前整理手続を有利に進める技術が求められます。

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一般市民を説得しなければならない

これまで行われてきた裁判官だけの法廷では,法律用語が飛び交い,当事者も分厚い書面を提出したりして裁判官を説得しようとしていました。裁判官も,裁判官室で記録を熟読し,裁判していました。

しかし,裁判員裁判では一般市民が審理を担当します。裁判員が分厚い書類を読むことは想定されていません。法廷で見て聞いたことだけで判断するのです。これまでの法律家同士の常識は通用しません。一般市民にわかりやすい言葉で,裁判員を説得しなければ,自分たちの主張を受け入れてもらうことはできなくなりました。

point.3

裁判員裁判の弁護技術

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公判前整理手続を活用する技術

公判前整理手続で裁判の準備をしているときから闘いは始まっています。公判前整理手続の中で行われる手続で,弁護人にとって最も重要なのは,検察官に対する証拠の開示の請求です。わかりやすくいえば,検察官が捜査によって集めた証拠を,弁護側にも見せるよう要求する手続です。

証拠開示請求にも技術がいります。技術があるかどうかで,見られる証拠の数が全く違ってきます。いかにたくさんの証拠を検察官に開示させるかで,裁判でできることが大きく変わります。裁判に向けて最高の準備をするには,この証拠開示請求を正しく行うことが必要不可欠になります。

ほかにも,公判前整理手続では,お互いの提出する証拠を採用するかどうかを決めたり,どんな証人の話を裁判で聞くのかを決めたりするために,話し合いが行われます。弁護人には,弁護側の証拠を採用させ,逆に検察側の不当な証拠請求を防ぐ役割が求められます。そのためには,正確かつ深い法的知識,あるいは検察官や裁判官との交渉技術が必要となります。

このように,裁判員裁判では,公判前整理手続の段階からすでに勝負が始まっており,この段階ですでに専門的な技術が要求されるのです。

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すぐれた法廷技術

一般市民を法廷で説得するには,口頭でのわかりやすい説明が求められます。そして,ただわかりやすいだけではいけません。わかりやすい説明が,依頼人の主張を効果的に伝えるものであり,そして正しい法理論に裏付けられている必要があります。事実は何であるか,証拠の見方,法律の問題点等をふまえて一般市民を説得するためのプレゼンテーションの技術が求められます。

証人尋問も,以前は証人尋問のやり取りが後から書類になり,それを裁判官が裁判官室で読んでいました。裁判員裁判では,証人の話を直接聞いて理解できるような尋問を行わなければなりません。弁護人には,すぐれた尋問技術が要求されます。これらの尋問技術やプレゼンテーション技術などを「法廷技術」と呼びます。すぐれた法廷技術を持つためには,正確かつ深い法的知識が必要です。そして,研修や事件等を通じて,日々その技術を鍛えていかなければなりません。

裁判員裁判ですぐれた弁護活動をするためには,鍛え抜かれた法廷技術を身につけていることが必須になるのです。

トップページの画像およびこのページの法廷画像は、青山学院大学の模擬法廷の写真を使用させていただきました。